武道を学ぶ際に、筋力トレーニングは必要でしょうか。
最初に結論を書いてしまうと、「筋力が不足している人には必要で、足りている人には不要」となります。当たり前のようですが、トレーニングは良くも悪くも特別な何かではなく、単なる補強(足りない部分を補う)の手段でしかないのです。
競技が主体の武道や組んだり投げたりする武道に比べて、私たちが学ぶ流儀はそれほど強い筋力が必要ではありません。
ただ、現代と私たちが学ぶ伝統武道が生み出された時代とでは生活の負荷が大きく異なるため、現代の私たちは伝統武道が前提としていた筋力に届いていない可能性も大いに考えられます。特に人流制限が行われた2020年以降、生活様式が変わり普段の暮らしの中の運動量が大幅に減ってしまった方も多いことでしょう。
技術にはそれを実現するために必要となる筋力があります。それがかつての武人が特別な鍛錬をせずとも普通に備えていた水準のものだとしても、電車や車で移動し、力仕事をせず、座る時間の長い私たち現代人が何も鍛錬せずに備えているとは思えません。
また、40代以降は下半身を中心に筋力も筋肉量もどんどん減っていきます。生殖適齢期を終えた個体が移動に支障を来たすことで淘汰されていくことを促す仕組みなのかもしれないなどと愚考しますが、とにかく今年48歳となる私もこの現象を実感しています。
「武道の稽古をやっていれば、必要な筋力は付いてくるのではないか」という考え方も根強くあります。そしてある段階までは確かにそういう部分もあります。しかし、私たちの稽古内容でいえば、形や試合を行っているだけでは早晩頭打ちになってしまい、新しい技術の獲得や深化の妨げになる可能性があります。
以上の理由などから、特に40代以降の方は何かしらの筋力トレーニングが必要であると考えています。
ただし、筋力トレーニングと言っても腕立て伏せやバーベルトレーニングだけがトレーニングではありません。私たちの稽古内容で言えば、下から切り上げる素振りを丹念に繰り返したりすることも、目的意識を変え取り組み方を変えれば立派な筋力トレーニングとなります。
また、トレーニングのやり方や内容も人によって様々です。最初に書いた通り、トレーニングが足りないものを補う「補強」である以上、どんな視点で何が足りないのかという分析がまず必要であり、やり方や内容はそれを下敷きにして決まっていきます。
汎用的なものはいずれこちらに書くこともあるかと思います。門人の方で興味や取り組む意欲のある方は私に直接聞いてください。
赤羽根大介