稽古時間が多ければ多いほど良いわけではありませんが、例えば仕事の合間に週1回合同稽古へ参加するだけでは物足りないことも多いと思います。
そこで稽古場に来ずとも1人で行える稽古をいくつかご紹介します。1人でできることは1人で行い、稽古場での稽古は相手と向かい合って稽古しなければ分かりにくいことに注力するのが理想です。
1:稽古の振り返り
まず行っていただきたいことは、稽古場での稽古の振り返りです。全体に向かってお話ししたことや、皆さんご自身に直接お伝えしたことをその場限りで流してしまわず、次の稽古日までに反芻してみてください。それだけで稽古の効率は大きく上がります。
私が名古屋本部に頻繁に通っていたころ、稽古を終えてホテルに帰ってからすぐに先生方にご指導いただいたことをメモやノートにまとめていました。そして、次回稽古に参加した時に同じ指摘を受けないつもりでそれまでの時間を過ごしました。
同じことをする必要はありませんが、ご自身に合ったやり方を見つけてください。
2:形の手順を覚える
初心者に限らず、新しい形をお伝えした時などに実践していただきたいことです。
新陰流における「形」は、理合を学ぶために仮に定められたものに過ぎません。しかし、稽古を進めていくためには代表的な形の手順を覚える必要があります。
動作を機械的に覚えるのではなく、相手とのやり取りに着目すると覚えやすく、理解も深まりやすくなります。
3:柔軟性や基礎筋力を上げる
肩周りや股関節周りの柔軟性や特に下半身の筋力は、生活様式や加齢によって年々損なわれていきます。常人を超える柔軟性や筋力が必要なわけではありませんが、自分が生まれつき備えている能力は錆びつかせずに保つ必要があります。
どういったことが必要なのかはそれぞれに異なります。折に触れてお伝えしているつもりですが、分からない方はいつでも質問してください。
4:各種の素振り
一人稽古において形の動きの一部を繰り返し練習することは、基本的にはあまり必要ありません。まずは真っ直ぐの素振りを心ゆくまで行ってください。大人は回数を数える必要はありません。刀と身体の一体感や、地面から刀に力が伝わる経路など意識すべきポイントや目指すべき地点は稽古でお伝えしている通りです。
その他には順逆の素振り、下からの切り上げの素振りなど、目的に応じて行ってください。空いた時間に1本でも2本でも、竹刀や木刀を持たずとも行ってみてください。
5:座学
新陰流には様々な資料や研究が残されています。身体を動かすだけではなく、遺された言葉を味わうことも大切な稽古です。父もたくさんの本を書いています。まずはそこから読んでみると日々の稽古との親和性が高く、理解しやすいと思います。それらを手引きに、余裕があれば原典にあたってみてください。
その際非常に重要なことは、直感的によく分からなかったことを、無理矢理今持っている材料の中で理解しようとしないことです。分からないことを分からないまま傍らに置いて稽古を続けていると、ある時突然腑に落ちる時が来ます。
6:日常の姿勢を観察する
この場合の「観察」とは自己観察のことです。生活の中で自分がどういう姿勢・体勢をしているのか、意識の片隅でいつも自己観察をしてください。外面的な「正しい姿勢」をしようとする必要はありません。まずは自分がどのような状態にあるのか観察することが大切で、どのような状態であれ、そのまま認識できることを目指してください。
一際地味なことではありますが、そのような視点(感覚)を育てることは非常に重要であり、そのためには日常的に取り組んでいくことが不可欠です。
まとめ
長々と書きましたが、可処分時間や熱量に応じて取り組みやすいことから取り組んでみてください。劇的な変化があるわけではありませんが、そういったことの積み重ねの先にそれぞれが目指すべき境地があるのだと思います。
質問などありましたらお気軽にどうぞ。