春風館初代館長・神戸金七先生自筆の「春風館道場心得書」が春風館本部公式Xにアップされていましたので、こちらにもシェアいたします。
「春風館」の道場名の由来も記されていますので、ぜひご一読ください。
私たち関東支部は大学の公開講座から始まっていることもあり、あまりこういった部分を強調することはありませんでした。しかし、稽古を深めていくにはしっかりと向かい合い、心に留めておく必要があることでもあります。
ご不明な箇所がありましたらご質問ください。
2025年3月6日追記:画像の後に文字を書き起こし、読みやすくしてみました。原文と併せてご活用ください





春風館名の由来
春風館は当流中興の祖剣は柳生厳春先師、槍は尾張八代藩主宗勝(前名友相[ハル])先師、和は七代藩主宗春公(享保の頃、庶民と共に自由に遊び名古屋繁栄の基を開いた人)の風を偲び、春風と名付く。
古語に曰く「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」
当館に学ぶ諸士はまずもって和を第一とし、苟も(いやしくも)喧嘩口論することなく相椅り(あいより=助け合うこと)相助けて楽しく修行することを望む
一、当流の祖、石舟斎は兵法について左のごとく述べている
「兵法は行亦兵法坐亦兵法臥亦兵法」
すなわち当流兵法はしない、やりを稽古するときばかりではなにもならない。道を歩くときも四方八方に目を配り現代の交通地獄に油断をしないこと。家にありても我身をおそう敵は随処にあることを忘れてはならない。食物にしてもその食する方法、温度の高低にも十分注意しその鮮度についても心がけねばならない。家の出入口、戸の明けたて、道の行きちがいにも他人を1メートル以内に近づけず、すべてこれらは心の下作りとして古来より幾多伝えられている。
一、石舟斎兵法修行三原則
温良や恭謙譲は兵法の奥意なりけり
大事なりけり
兵法は稽古鍛錬常にして色に出さず
かくしつつしめ
太刀かたなそれのみならずよけはずし
心にかけて兵法をせよ
すなわち兵法修行の諸士は常におとなしいということ、たがいにゆずりあうこと、稽古鍛錬は常に怠ることなく、しかもこれを表に表し我しりたらんごとく粗暴のふるまいなきこと、また太刀のみならずあらゆる兵器のよけはずしの研究も必要となることを教えている。
一、石舟斎はまた没茲味手段の書冒頭に兵法修行には第一勇の事とありて、いかに太刀、槍の業優れたりとも勝負の場にありては毫(すこし)も臆するところなく生死を超越したる真の勇気を発揮することを求めている。この勇なるものは智、仁を基盤としたものでなければならぬ。いたずらに血気の勇にはやり節を失うことを厳に戒めている。
一、当流中興の祖厳春先師の語
兵法に必勝の理ありて必勝の業なしと世もっていうなれども、いまだ至らざるところあるに似たり。
それ勝ちの至大なるは己に勝つを第一とす。克己復礼(自分の欲望をや私欲を抑え、社会規範や礼儀に従って生きること)の道行はるれば天下に敵なし。天下に敵なきをもって必勝というべきか、しからば己に勝つを必勝の業というべし。
つつしみて昨日の吾に今日勝つと
学べばいつかあがる兵法
終わりに石舟斎子兵法者心得の歌二首を挙げて結びとする。
兵法の余流をそしるその人は
極意に至らぬものとこそ知れ
新陰を余流とみなす兵法に
奇妙のあらばならいたずねん